揺処【caravan】【Falatoria Story】企画創作ネタ板 [PR]× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 白輝都譚 その3第4夜 『白輝の都』 塩の町にて その3
・・・思ったより長くなってしまいました・・・! 追記:4項に分割しましたー *** 3 *** ――――― ドガッ!
身を強張らせた二人の前で、ゴロツキの男は白目を剥いて昏倒する。 「・・・!?」 その背後、襲い掛かってきた男を足蹴にして仁王立ちする長身の黒い姿に、二人は呆然としたまま目を見開いた。ぽかんと開いた口が塞がらないのは、彼のすらりと長い足が、襲い掛かってきた男の後頭部に鮮やかにヒットする様を目にしたからだ。 「こーら、お前ら」 その声に、ようやっと我に返った少年は顔を輝かせた。 「師匠・・・!」 にやり、笑ってこちらを見下ろすのは、トアーラが放棄したはずの荷袋を抱えた彼らの師匠である青年。 「アルファルド・・・・・・先生・・・・・・」 ざっと周囲を見回して状況はすでに把握しているはずなのに、彼らの師匠は笑顔で問う。
*** *** ***
「お前ら、運が悪かったなぁ」 この台詞は被害にあった子供達に向けてではなく、アルファルドと相対したゴロツキに向けられた言葉だった。 路地裏に三人で腰を下ろし、アルファルドはトアーラの手の様子を見て思い切り顔を顰めた。 「ゆっくり開いて・・・・・握って・・・・・・」 もう使えないと判断されたトアーラのフードを手際よく裂き、丁寧に巻きつける。眉を顰めたままの相手にトアーラは縮こまった。 「うっわ痛そ・・・お前、無茶するなぁ!」 その二人の手元を覗き込んで呻いたガドゥの頭を、アルファルドは遠慮なくはたいた。 「お前が言うんじゃない、お前が!」 その珍しく怒りを含んだ静かな声音に、トアーラとガドゥはうっと言葉を詰まらせた。 「ちっとばかし俺から組み手を齧ったからって、お前ら自分の力量を過信してないか?喧嘩だからって舐めんなよ。 ヘタすりゃその短刀が、お前らの首を掻っ切ってたかもしれないんだぞ」 懇々と続く説教に最初の内こそしゅんとしていたガドゥが、そのとき突然がばりと顔を上げた。 「そ、そうだよ師匠!あんたどうして、こんな分かりにくいとこにあんなタイミング良く助けに来れたんだ?!」 アルファルドの説教を遮るように慌てて声を上げる。 「――あ? ああ・・・・・・呼ばれたんだよ」 目を丸くする子供達の前で青年は肩を竦めた。そして何かを思い出すように頭上を見上げる。 「たぶん・・・・・・水のルフだったと思うんだが」 咄嗟にトアーラの頭に浮かんだのは、ゴロツキの男と短刀の奪い合いをしていた時の事だ。 「お前ら、ルフなんて持ってたか?」 問われた両者は首を左右に振る。それを見た青年は眉を寄せてさらに首を捻り、そしてトアーラに注目した。 「トアーラ・・・お前、ほんとうにルフ持ってないか?」 目を丸くする彼女に、突然目の前に小さな水鏡が現れたのだと彼は言った。 「――だからここに来て、お前が居るのを見て驚いたんだよ。でもよくよく考えてみれば、水の記憶は全部お前視点の光景だったんだよな」 とにかく間に合って良かったと溜息をつく彼を、トアーラ呆然と見返すことしかできない。頭の中が混乱していた。これまでルフを目にした覚えはない。覚えはないが・・・・・・まさか・・・・・・ 「あれは、なんかの命令に従って動いてたな・・・主人の危機に発現するようになってたんじゃないか?」 付け加えたアルファルドに、ガドゥは率直な疑問をぶつける。 それにも頷き返し、 「ああ。 召喚士以外が持つルフは効果固定の魔法アイテムだろう。複数の命令にしたらできるんじゃないか? 覚えがなくても、一度召喚士の元に行ってみろと言うアルファルドにトアーラは小さく頷いた。
耳飾りの青い石から、小さな水滴の音が響いた気がした。
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