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揺処

【caravan】【Falatoria Story】企画創作ネタ板

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2024/05/18 (Sat) -

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白輝都譚 その4

2008/11/02 (Sun) - caravan-小説

第4夜 『白輝の都』 塩の町にて

さっそく修正(汗
長かったのでもう1ページ分割しました。




*** 4 ***

 

「ただ、あのルフが誰を助けに呼ぶかって基準はわかんねぇけど・・・・・・まーぁ俺を呼んだのは正解だったな!」


 自画自賛とばかりに、がははと反り返って笑う青年に少年は疑いと呆れの眼差しを送っている。
が、突然豹変したように顔をきらめかせた。 

「そう!そうだよ師匠!あの足蹴りの見事さに俺は感動したぜ!格好良かったなぁ、惚れ直した!なぁトアーラ!」

 一気に機嫌を良くしたアルファルドに、ガドゥは畳み掛けるように言う。突然矛先を振られたトアーラは慌てた。ガドゥがこのまま説教を済し崩しにする気だと分かったが、師匠の強さに見惚れたのは確かなので慌てて頷く。

「う、うん・・・・・・かっこよかったです・・・・・・すごく・・・」
「――ん?おお、そうかそうか!てめーらこれ以上俺に惚れてくれるなよ!」 

 青年は機嫌よく 呵々と笑う。してやったりと笑う少年と、少々困り顔の少女は互いの顔を見合わせた。―――が、しかし。
ひとしきり笑い終えると、彼らの師匠でもある青年は突然目を細めて弟子の二人を睥睨した。

「さて」

 機嫌取りに成功したと思っていたガドゥはびくりとして身をすくめる。トアーラはごくりと唾を飲み込んだ。

「――帰る前にひとつ。俺、こういう真面目な話苦手なんだけど、一応お前らの先生だからな」

 空気の変化に押し黙った弟子達に、アルファルドはため息をついて長い髪をかき上げた。

「今回はお前らの驕りが原因だな。・・・ガドゥ、俺は喧嘩するなとは言わん。ただ、自分から手を出す前に状況を確認して、判断しろ。――逃げるが勝ちって言うだろ? 逃げることも戦闘の一部だと認識するんだ」
「・・・・・・はい」

 ――まぁ、仲間を助けに行ったその判断は褒めてやると、青年は乱暴に少年の頭を撫でた。
ガドゥはその子ども扱いを嫌がる素振りを見せながらも照れくさそうに笑う。
そしてアルファルドはトアーラに向き直った。

「それから、トアーラ。言いたいことはガドゥと同じだ。 それと・・・・・・その短刀。これは前から言おうと思ってたんだが、
武器として使う気のない飾りなら、持つな。邪魔になるだろう」
「!」

 今回の一件が、彼女の持つ短刀が原因だったことを彼は知っている。彼女が鍛錬中も、決して短刀を武器として使用しないことも。それ故の忠告だった。
――しかしトアーラとしては、まさか己の驕り以外にこれについて指摘されるとは思っていなかった。
存外衝撃が大きく、トアーラは短刀を胸に抱いて深く俯く。
熱を持った両手で、それでも力を込めて拳を握り、一度大きく息を吸って顔を上げた。

「いいえ・・・・・・いいえ、先生。これがあるから、わたしはがんばれるんです。離す気は、ありません」
「・・・・・・何?」

思わぬ反発にアルファルドは片眉を跳ね上げる。しかしトアーラは真っ直ぐに彼の目を見つめ返した。

「わたしが・・・・・・何かで死んだりしたら、きっとこの短刀は奪われてしまう。だからわたしはこれを・・・守るために、強くなりたいんです」

今回の自分の浅はかな行為はとても反省している。けれど、それはこの短刀のせいではない。だから手放す気はない。
いつになく口数が多いトアーラの様子に、対面する二人は揃って口を噤む。
しかしアルファルドはすぐに気を取り直し、胡坐に肘を突いてトアーラとその胸に抱く短刀を見比べた。

「それは、そんなに価値のあるもんなのか?」
「・・・・・・わたしにとっては」

守るものがあれば強くなれると、かつてトアーラに教えてくれた人がいる。
古美術としての価値ではない。それは人としての、心の価値となる。
それなら箱に閉まって誰の目にも触れさせず守ればいいと、言われてしまえばそれまでだ。
だがそれでは意味がないのだと・・・この短刀と共に砂漠を渡る旅をしているのだということを伝えるには、
相手にこれまでの経緯を語らなくては伝わらない気がした。しかし今の彼女には、そこまで上手く伝える自信が無い・・・。
これ以上言葉にならないもどかしさに、トアーラは唇を噛み締め顔を伏せる。

そんな彼女にアルファルドは目を細めて、すいと腕を伸ばした。

「そっか」

 彼は、ぽんぽんと軽く叩くように彼女の頭を撫でて、ニッカと笑った。

「――なら、そのままでいい。そのまま強くなれ」
「・・・・・・!」

 呆然と顔を上げたトアーラに、ただし手の傷が塞がるまで鍛錬は禁止と付け加える。

「じゃあ真面目な話はおしまい!」

 アルファルドは明るく宣言した。そして俺ならやっぱこれだと、天誅とばかりにガドゥを捕らえてぐいぐい締め技を食らわせ始める。
ぎゃあぎゃあ騒ぎ始めた男たちの前でトアーラは再度俯いた。
きゅうっと胸が締め付けられるような痛みを感じて、戸惑いを覚える。
その痛みは苦しいものではなく、なぜだか嬉しいものだと――それはひどく心地よいものだと気付くと、さらに戸惑いが増して意味もなく焦る。

(――― どうして、こんなにあたたかいのだろう・・・・・・)

 腕の中にある短刀の重みと、耳朶に揺れる耳飾り。入隊当初の大切なものは、それだけだったはずなのに。
今は、熱を持った両手の痛みさえも愛おしいような気がしている。

 

「――さてと。じゃあ帰りますか」
「おう!腹減ったー!」

ここにいなければ、出逢えなかった人達がいる。

「お前なぁ・・・反省が足りん!お前の飯は俺が食う!」
「は?!なんっだよそれ!」

 トアーラは今無性に、過去に置いて来てしまった、ここに居ない人たちに何かを伝えたくなった。
歩き始めた男たちの後方に立ち止まり、その背を見ながら心の中で言葉を探す。

(あのね・・・わたし、元気だよ・・・・・・大丈夫、わたし、今ね――)

 耳朶の耳飾りが小さく揺れる。

 

「ぜったいやらねぇ!」
「いやもらうね。俺決めたからね。今日の晩飯何かなー」
「やらねー!!」
「はいはいはい。トアーラ、行くぞー」
「トアーラ!師匠が俺たちの飯まで食う気だぞ!帰ったら死守するぞ!」

 アルファルドとガドゥは振り返り、遅れている彼女の名を呼ぶ。

 

「・・・・・・はい!」

 

 暮れ始めた空を背にする二つの影に、トアーラは小さく微笑んだ。

 

 


end

-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

 ■ 登場人物:トアーラ / ガドゥ@シマムラさん / アルファルド@たまださん ■



 

***後記***

 

■は・・・・・・初めてこんな長い文章を書きました・・・ここまでお付き合い下さった方、ありがとうございます。
そして、ガドゥ@シマムラさん&アルファルド@たまださん、お借りしました!お二方に感謝を・・・!
■たまださんが描かれた弟子漫画を拝見したときから、アルフ氏とガドゥ君のお二人を借りて何か描きたいと思っていました。こんな長い文章になるとは思っていなかったけれど・・・ (苦笑
それぞれのキャラさんのイメージが壊れていなければいいのですが・・・密かにシマムラさん宅とたまださん宅を往復させて頂きました。そしてそれぞれの描かれる漫画に悶えました。格好いいなぁ・・・!!
ガドゥ君のやんちゃ振り、もっと派手に書ければ良かったと思います。あれ?というか彼、長剣持ってますよね!あああ、素手でゴロツキに挑戦したのは組み手の成果を試すためとか思って頂ければ・・・・・・ここでこじ付けして、申し訳ありません・・・!
そしてアルフさんには弟子達が悪者に絡まれてるところに颯爽と登場して頂きました!かっこいい!(何
あ、これは私のイメージでもあります。すみません(笑

■これは第4夜、トアーラの衣装チェンジ前のお話になります。
ちなみに彼女のお買い物は現紹介イラストの赤い上衣でした。無事師匠が拾ってきてくれたおかげで、ちゃんと着替えることが出来ました(笑
あと唐突に生まれたルフ設定・・・・・・やっぱ何か相棒的なものが欲しいなと思って・・・・・・形にできるかは未定ですが
召還士さんのもとに行く口実が出来ました。 あと、お医者さんも!(笑

■のんびりペースにキャラバンライフを楽しませて頂いております。
もっといろんな方とお知り合いになれるように。でもこそこそと(笑
トアーラの物語にお付き合い頂ければ幸いです。

 

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